~「新世界より」こぼれ話その3~ partⅡ

こぼれ話その3の続編です。


「チケットを2枚、ください」

「今夜は残念ながら満席です。」

というやり取りの後に諦めきれずに立ちすくんでいた私達に、地元のチェコの紳士が両手に何か持ってやって来て、その2枚あるチケットを直接売ってくださった時はますますこの街が好きになってしまいました!

そしてスメタナ作曲の序曲 「売られた花嫁」が始まり、ホール全体が生き物のように音楽を息衝かせて私達を包みはじめました。

(ヨーロッパの空気や気候、風土、光など日本との違いはありますが、私達が音楽をする時に本当に石の文化と木の文化の違いはとても大きいと思います。西洋の音楽は、石の文化の中の響き「残響を伴う響き」から生まれ たことをその時も強く肌で感じました。演奏をする場やその音響も音楽の一部で、音楽が息衝くのを助けてくれるのです。)

さて、次にドボルザークのスラブ舞曲が始まりました。 この曲は彼が子どもの頃村で、出稼ぎに来ていた鉄道建設の労働者達が唄うウクライナ民謡ドウムカや幼少から慣れ親しんでいた民俗舞曲のリズムなどが彼の血と肉となって体の中から涌き出たような作品です。

音楽が豊かに何百年とスラブの地で生きて来た人々の自然との営みや感謝、生きることへの喜びや悲しみを唄います。全てのものを育んでいる大地や草地の香り、川の豊かな流れにのって 。

オーケストラ、ホール、聴衆が一つになり自由で有機体のように息をしている音楽は、ありのままであることがゆるされていました。ああ これでいいんだと。

本当の音楽とはこういうことなのかと。涙が溢れてきま した。この地に足がついた彼らの音楽は本物だ、何という音楽的な民族なんだろう....! 幸せだなぁ!と。

日本でもドイツでも演奏会では素晴らしく完成されたパフォーマンスに感動したことはありますが、あの一夜の体験は特別で宝物のように私の心の奥深くにあるのです。


そんな私があれからもう何十年も経った今、皆様と「新世界より」に向き合って作品を唄いあげて行くことにとても喜びを感じています。もちろん全ての音をピアノで表現するのは苦労があり、ピアノ1人バージョンだけでなく連弾バージョンでさえ音を書き直したり付け足したりと工夫がいりますが彼の音楽の本質である、本当の自然の中に生きた人間の音楽を唄えることができたらと。

そしてその音楽は、きっと皆さんのオイリュトミーによって語ることができることを信じています !

最後に

ドボルザークがニューヨークで黒人の歌手のハリー・ バーレイに歌い継がれて来た黒人霊歌を聴かせてもらっていましたが、彼の歌声をこれで聴くことができます。 ドボルザークもたぶん聴いた歌かもしれません! それでは今回はこのあたりで。。。(大羽 美菜子)

(↓こちらは1958年にカーネギーホール でのPaul Robeson による歌です)

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